世界遺産奈良春日原始林を歩きました

 青葉の美しい梅雨晴れの一日、近鉄奈良駅から奈良公園を斜めに通り抜け、南の遊歩道入口から、春日原始林の東縁を回る春日奥山道路を経由して若草山に至るコースを歩きました。

 

鹿苑の子鹿_vr3.jpg 朝の奈良公園では、つぶらな目がかわいい鹿の子模様の小鹿たちが緑の草を食んでいる姿があちらこちらにありました。「今年生まれた赤ちゃん鹿はもう少し先に行くと11時からみられるよ」と鹿せんべい売りのおばさんが説明してくれました。

 

 

滝坂の道web2_rv2.jpg 南の遊歩道というのは旧柳生街道で、かすかにピアノの練習が聞こえてくる静かな住宅街のなかを10分ほど歩くと、能登川のせせらぎが聞こえる林の中に入ります。滝坂の道という鬱蒼とした石畳が続きます。顔を上げると
木々の間に日に照り映える鮮やかな青葉が見えます。

 ゆっくりとした登り道で、行き交う人もほとんどなく思い出したように鎌倉、室町時代の石仏たちと出会います。印象的だったのは大日如来が横に刻まれた寝仏(ねぼとけ)石で、傍らに会津八一の歌碑がありました。歌に寄せる作者の心情がじかに伝わってきました。

 「かけおちて いは(岩)のしたなる くさむらの つちとなりけむ ほとけかなしも」

 登り坂に辟易し始めたころに、柳生方面との分岐点、荒木又衛門が試し斬りしたという「首切り地蔵」があります。ここを左折して、行き交う3人連れの熟年女性達や単独行の若い男性などとあいさつを交わしつつ、広めの道を10分歩いたところに芳山(よさん)交番所があります。(誰もいませんでしたが)

春日道路web2_vr2.jpg これから先は春日奥山道路で自動車道です。原始林というから手付かずの森林と思いきや、枝打ちや間伐など手入れが行き届いていることがよくわかります。心地良い大きな緑のトンネルが続きます。若草山までの間に行き交った乗用車は3台と少なく、バイクは2台ずつ3組ほどでした。バイクの音はこの道路には全く似合いません。

 さて、木々の緑を堪能しながら40分歩いたところで、右階段をのぼれば興福寺別院鶯滝歓喜天、左に階段を下りれば鶯の滝という標識がありました。まずは歓喜天にご挨拶をと階段を上がると、建物は古い鐘楼のみで梵鐘は外され荒れ放題の様子。突然その鐘楼の建物の中でガタガタッと音がしました。人や生き物が中に居るのならその気配もあるだろうにと、そばまで行ってしばらく耳を澄ましましたが、それっきり。「まさか昼の日なかにモノの怪でもあるまいに」と思いつつも扉を開けて中をあらためるのも気味悪く、そろりそろりとその場を離れました。一体あれは何だったのだろう?

鶯の滝web2_rv2.jpg 「鶯の滝」は自動車道から階段をかなり下がったところにあり、10mにも足りない小さなめの滝ながら汗をかいた身には心地よく、滝の前で遅めの昼食。ここは緑の奥山道路をドライブする人たちも必ず立ち寄るスポットらしく家族連れが2〜3組来ていました。

 さて、この先目指す若草山頂まで2.1kmという途中の標識に元気をもらって、30分ほどでようやく若草山山頂へ。緑の木陰の長いトンネルを抜けて、いきなり見晴らしの良い若草山の頂上(342m)で涼しい風に当たりながら奈良盆地を眺望する気分は格別でした。(観光ビジネス研究会 河合秀彌)

 

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Q1:春日山原始林はどうしてできたの?

A1:奈良の春日大社の東には御蓋山(みかさやま)、花山があり、昔から春日大社のご神山とされてきました。標高498m広さは250haあり、この一帯山地は春日山と呼ばれています。聖域として1千年以上も前からの禁伐採林として大切にされてきた結果、今の自然が残っています。大正13年に天然記念物、昭和30年に特別天然記念物に平成10年には世界遺産に登録されました。(奈良しみんだより参照)

 

Q1:そうなんだ!春日山原始林散策の魅力はどんな所?

案内板web2_rv3.jpgA1:何と言ってもこれほど町の近くに原始林があるということ。175種類の樹木、598種類の草花、10種類の動物、60種類の鳥類、1180種類の昆虫も豊富です。(奈良しみんだより参照)森林自体よく整備され、様々な自然との触れ合いができることだと思います。道路、案内板も充実しており、要所にトイレも完備しています。季節によってはマムシや山ヒルもいるそうですが、道を外れなければ安全でとても良い観光ハイキングコースです。春は若葉、夏は青葉、秋は紅葉など折々の季節が

楽しめることでしょう。

 豊富な自然を専門的に楽しむ一方で蔓性植物も多いので、面白い恰好をした樹木を見つけるのも面白いと思います。売店なし、自動販売機もなし、すっきりしているのが、よいと思いました。

 

Q3: 石仏も有名なんだって?

A3:そうなんです。旧柳生街道は、剣豪の里、柳生に続く道で、かつての剣豪も通った道です。今回の道筋には、寝仏石、夕日観音(夕日を浴びて神々しい)、朝日観音(朝日に真っ先に照らされる)、春日山石窟仏、地獄谷石窟仏などがありましたが、首切り地蔵からもっと先、柳生への道には、平安時代、鎌倉時代、室町時代の作とされている沢山の石仏があり、多くの石仏の愛好家や写真家たちも訪れた道です。いずれご一緒しましょうか?いかがです?

 

Q4:ところで、「みかさ山」ってふたつあるの?

若草山頂web2_vr3.jpgA4:若草山は山頂部分は標高342mでこれを三重目と言っています。この下に二重目、一重目とあり、三つの菅笠を伏せて重ねた見えることから俗に三笠山と呼ばれています。一方、春日大社の後ろにあるご神山は御蓋山(みかさやま)です。両方とも「みかさやま」というのでややこしいです。もう一つややこしくしているのが、安倍仲麿の歌「 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」です。

 「春日なる」とあるから御蓋山の方だと思うのですが「三笠の山」なのです。奈良市役所にお伺いしたら、一時期は若草山を「三笠山」と呼んでいた時期があったが、今は、正式には、若草山は「若草山」であり、「三笠山」といえば、春日大社のご神山を指すということです。

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