『ものづくり観光視察(東大阪)』
『ものづくり観光視察(東大阪)』
平成30年1月20日(土)
東大阪市では、ラグビーワールドカップ2019が聖地・花園で開催されることが決定しています。
また2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開かれ、2021年には関西ワールドマスターズゲームズの開催が予定されています。
更に政府は、『明日の日本を支える観光ビジョン』の中で日本に訪れる訪日外国人を2020年には4000万人とする目標を掲げており、現在の2000万人台を大きく超え更に拡大する方向性を打ち出しています。
こうした好機を生かし、交流人口の拡大と地域の活性化を目的に、地元と一緒になって、「住んでよし、訪れてよし、稼いでよし」の観光マネジメントの視点を持ったここ東大阪での観光地域づくりを目指しています。
観光ビジネス研究会では、東大阪版DMOとして準備をすすめている一般社団法人東大阪ツーリズム振興機構(https://www.higashiosakatourism.com/)の事前情報を得て、市内事業者所で全国第5位(6千数百)、工場密度全国第1位の「モノづくりのまち東大阪」ものづくり観光を視察することとしました。
1、東大阪市観光振興計画
東大阪市観光振興計画では、以下の3つの重点施策を具体的に推進し、地域の経済的効果を創出し、新たなツーリズム産業の振興と、市民が地域への愛着や誇りを持てるまちづくりにつなげることとしています。
(1)モノづくりのまちを生かした「体験型」観光の推進
(2)ラグビーのまちを生かした「ラグビー(スポーツ)」観光の推進
東大阪市は、観光コンテンツとして次のようなことが検討できます。
①東京都大田区と並ぶ日本を代表する『ものづくりの街』であり、サポ―ティングインダストリーの事業所密度全国第一位の集積地であることが『ものづくりを活かした体験』が体験型観光の目玉となりえること、
②東大阪市ではラグビーのメッカ『花園ラグビー場』がラグビーワールドカップ2019のために現在改修工事中であることから、ラグビ―・ワールドカップを契機にDMO(Destination Management Organization)として機能しようとしていること、
③大阪市および堺市の両政令指定都市に次ぐ府内第3位の人口約50万人でを擁する中核市であり、司馬遼太郎の終のすみかとなった地であることなどの文化資源や商店街を活かした『文化・下町』が観光資源として活用できること
_*iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥氏の実家、山中製作所も
東大阪のミシン部品の中小製造業です。
観光ビジネス研究会では、2008年から「東大阪のモノづくり観光」を担ってきた、一般社団法人大阪ものづくり観光推進協会(2012年設立)(http://osaka-monodukuri.com/association/)の活動をフォーカスするために同協会足立専務理事へのヒヤリング(事例調査)と「ものづくり観光」を体験することにしました。
1.「モノづくり観光」を通じた地域活性化への取り組み
(一社)大阪モノづくり観光推進協会 専務理事・事務局長 足立克己氏講話
<地域活性化の取り組みテーマとなった産業観光振興>
テーマは、地域の中小企業経営者である「おっちゃんたちのものづくりへの熱い心」を伝えようというもの。
当初はものづくり観光を受け入れる企業は操業の支障になるなど、メリットがないなどの理由で協力してもらえる事業所はわずか4社であったが、現在は80社の協力(会員企業)を得るまでになった。
理解を得てきた背景は、人材の確保である。もっと言えば、若者を中心とするモノづくりへの関心の薄さへの危機感である。
担い手の減少に伴う従業員の高齢化は、中小製造業共通の悩みである。
東大阪市の試算でも、2040年までに製造業従事者数は2010年比較で半減すると予測している。
このままでは、モノづくりの原動力が消滅してしまう危機感すら想像できてしまう。
足立専務理事は、若者にモノづくりに関心をもってもらい、東大阪の中小製造業に参画してもらうことで、地域産業を活性化させることを目標にしている。
これまで、年間5~6千人のところまで来たが1万人くらいまでは伸ばしたいと意気込んでいる。
工場見学等受け入れる企業の直接的な経済的メリットはないが、東大阪の将来のことを考える理解ある経営者の心意気で支えられている。
一方、若者への産業観光の印象は上々のようである。訪れた学生さんの感想文からは、働くおじさんの輝く情景に関心が寄せられているという。
当研究会では、このような民間による地道な活動を支援するとともに、観光ビジネスの側面からも『中小モノづくりのメッカ東大阪』の産業観光振興を担える企画を継続する予定である。
<東大阪とモノつくり>
東大阪の産業の30%は製造業が占めている。ロケットから歯ブラシまであり、大体20人未満の規模。半分は4人以下。現在93社の仲間がいるが、ここでしかできない技術を持つオンリーワン企業もある。
東大阪のモノづくりのルーツは、職業集団河内鋳物師にはじまる。日本の鋳物産業のルーツともいえる。燕三条に大崎鋳物師があるが、ルーツは河内だと文書に書いてある。
大和川の水路変更(1705年)を機に南河内からこの職業集団が現在の東大阪に移ってきた。河内湖が干上がり木棉が栽培されるようになり河内木綿が大坂の経済発展に大いに寄与した。
近代産業として枚岡地区で伸線屋が多い。この時の動力が山からの水力であり石切界隈には薬屋も増えた。
布施・河内地区は金属関係企業が多い。大阪城に砲兵工廠があった。ここで育った技術者が独立し、高井田や東大阪の方に貸工場を作りその弟子たちが工場を借りて金属加工を営んだ。
iPSの山中教授の実家の山中製作所も石切にあり、お母さんが見事にモノづくりのこころを従業員に教え込んだという。
<今後の課題>
次の課題はインバウンドの取り込みであり人材確保に結び付けられるとよいと考えている。
中農製作所さんのところのように、ベトナム人を受入れして戦力化しており活かしている。海外からも受け入れる人材を増やして、そのレベルを上げることが課題になる。
これまで、民間主導で(一社)大阪モノづくり観光推進協会が実績を積み上げてきたが、ものづくり観光は新たな展開を迎える。
2016年10月に東大阪市の観光振興全般を担う組織として一般社団法人 東大阪ツーリズム振興機構が設立(東日本版DMO)され、ものづくり観光がその事業の一つに据えらえた(前述)。
今後は、修学旅行生や一般研修以外にも、インバウンド観光客や個人観光客にも観光ビジネスを拡大していく方針が打ち出されている。
2、野田金属工業株式会社(ものづくり現地視察)
・板金加工
テナントビル、店舗、サイン、車両、その他 向け建築装飾金物
・空間オブジェの製作施工
ステンレスギフト・ステンレスアートの製作・販売
・従業員 38名
・昭和40年創業
野田会長講話「モノづくりは、自分づくりから」
会社創業に至る経緯・モノづくりに対する想い・会社の理念
・会社の行動規範はシーカー(Seeker・探究・求道) 結局は人格が大切
・営業部がない。できないとは言わない同社の哲学。納期は絶対厳守。
・量ではなく‘個’を大切にする。
・七度計って一度切る精神
・画龍点睛をおさえる
・売り込みに行ったら値切られる
・建築装飾金物のリードタイムは1~3日。全て受注生産。
<工場視察>
シャーリング加工機
(板金素材のせん断)
レーザー加工機
我々の現地到着を待って、野田会長自らが経営理念の講話、工場の案内をいただきました。
ものづくり観光終了後は全員での集合写真。後日、会社側で撮影された写真データをCD-ROMでご丁寧に郵送くださいました。
今後も、観光ビジネス研究会では、
ものづくり観光ツーリズムを計画していく予定です。
今回、募集した企画ツアーのチラシ