東大阪ものづくり視察研修ツアー『サンライズ鉄工株式会社』 2019年7月20日(土)
2019年7月20日(土)に催行されました「東大阪ものづくり視察研修ツアー」は、河内平野の伝統工芸である河内木綿はたおりを現代に伝える「河内木綿はたおり工房 様」、製品力・対応力・技術力・機動力・創造力の5つの力を結集させて稼働しているものづくり企業「サンライズ鉄工株式会社 様」を視察させていただきました。
観光ビジネス研究会 河合眞起人 執筆の「サンライズ鉄工株式会社 様の視察レポート」をお伝えいたします。
【サンライズ鉄工株式会社 様 視察レポート】
<会社概要>
「サンライズ鉄工株式会社 様」は、東大阪市の北部のやや東に寄ったところ、中小の工場が集まった地域にある。
フォークリフト部門、製缶部門、溶接部門と三つの部門を擁している。フォークリフト部門では、フォークリフトメーカやユーザからの注文により用途に応じたショベルやバケットなどのアタッチメントの製造を行っている。
これまでに蓄積した経験、技術により企画、設計提案することも多い。
製缶部門では、自動車の生産ライン設備である運搬装置のフレームや大型のダクト、反転装置などを製造。
溶接部門は自動車用の補修部品クロスロッドを溶接、研磨、焼き鈍しという一連の工程を自社でこなしている。
この職場では材料同士を高電流で溶かして圧接するフラッシュバット溶接機という比較的レアな溶接機が活躍している。
社員は25名、それぞれの職場で少数精鋭で頑張っている。主力は30歳代―40歳代という。
会社パンフレットによると『5つの力すなわち製品力、対応力、技術力、機動力、創造力をバランスよく結集させ新たな価値を生み、高品質を提供すること』を経営の行動指針としている。
『社員の知識や技術の伸長のみならず、個々の人間性の涵養が最重要である。社員の人徳の総和が社徳となり製品に活かされ、社会に役立ち世の中への恩返しとなる。これこそが高品質を提供する基盤である。』(筆者要約)とあり、これが会社の理念である。
<ヒアリング>
代表取締役社長の岡林一郎氏とフラッシュバット部班長の鳩間大樹氏にお話を伺った。特に印象的な話を紹介する。
リピート注文は全体の20%~30%に過ぎず、60%以上は受注仕様、特殊品であり設計から製造まで個別に対応する必要がある。
長年の経験から培った知識、技術を駆使して、お客さんの思いを取り入れた高品質と短いリードタイムでお客様に喜んで頂いている。
例えばフォークリフトのアタッチメントでは、大手のメーカーで1~2か月かかるところを同社ではその3分の1か4分の1で納めことができる。
なぜ、そんなことができるのかといえば、同社の場合担当する部門長が直接客先に出向いて客先のニーズを把握する。設計のことも工程、能力のことも全部頭に入っているのできめ細かく小回り対応が可能となる、という。
それでも、受注型生産の陥りやすいこととして、複数案件の納期が重なって一時的に現場に負荷がかかることがある。
どう対応しているのだろうか?
一部外注先に手伝ってもらうこともあるが、こうした“きつい”場面でも社員たちはむしろ率先して連日晩くまで残業でこなしてくれる、社長としても頭が下がる思いだという。
8人の幹部による月次業績の検討や日頃の客先からの喜びの声などの情報の共有化が大きな原動力となっているのであろう。
社員旅行やBBQ、初もうでツアーなど家族ぐるみのイベントも社員同士の距離を縮めているに違いない。
2年前から中学修学旅行生の見学の受入れを始めた。すでに16回を数える。生徒たちは見学を終えると目の輝きが変わっている。
そうした変化を見るのもうれしいし、生徒たちの感激が社員たちにもはね返ってくる。社員たちももっと人に喜んでもらいたいと思う。
社員からの提案で「見学の後は、生徒たちはおなかが空くだろうから」と、手作り出汁のうどんを出すようになった。
いわば余分な仕事だが喜んでサービスしてくれている。
<現場見学>
見学のために作業帽を拝借して現場に出た。作業している人たちがまっすぐこちらを向いて「こんにちは!」と声をかけてくれる。
手狭な場所での作業を見せてもらおうとすると、見学者が通りやすいように配慮してくれる。忙しい作業中であろうに見学者を見る一人ひとりの作業者のまなざしが柔らかいのである。
現場見学
溶接職場
初めて見るフラッシュバット溶接ではその音と火花に驚き、希望者には簡単な溶接を体験させていただいた。作品のペン立てはいい記念になる。
フラッシュバット溶接
溶接体験
フォークリフトのアタッチメントを初めて間近にみたが、なるほど用途によって形も大きさもさまざまである。「製造ロボットもあるが、これを使うような数モノ注文が少なくて稼働率は低い」という。
フォークリフトのアタッチメント
焼き鈍し
現場見学も終了に近づいたころに二人の男性が工場現場からでてきて、記念撮影のシャッターを押してくれた。
「私がたとえ1週間や2週間不在にしても、この会社は全く問題なく動くのですよ」という社長の一言がきわめて印象的だった。
サンライズ鉄工株式会社 Web サイト
出典:サンライズ鉄工株式会社 ホームページ
<執筆:観光ビジネス研究会 コンサルタント 河合 眞起人>